薬を変えてから吐き気が止まらない…食事が取れず2kg痩せた女子高校生を東洋医学から考える

精神科で処方されていた薬を変更したあとから吐き気が続き、2週間十分に食事が取れず2kg体重が減った女子高校生。病院で再度薬を変更しても吐き気が残る中、木氣治療室では「吐き気=胃」と考えず、体重減少や生活背景、脈の状態から身体全体をどのように考えたのか。東洋医学の視点から解説します。
結論|「吐き気」だけではなく、2週間食べられなかった身体を診る
薬を変えてから、
吐き気が止まらない。
食べようとしても気持ち悪い。
十分に食事が取れない。
そして、
2週間で2kg痩せてしまった。
今回紹介するのは、
実際に木氣治療室へ来院された女子高校生の症例です。
もともと、
起立性低血圧やうつの症状があり、
病院へ通院していました。
その中で、
精神科で処方されていた薬を変更。
その後から、
吐き気が続くようになりました。
吐き気が治まらないため、
再び病院を受診。
薬は再度変更されています。
それでも、
吐き気が残っている。
そして、
食事が十分に取れない。
その状態で、
木氣治療室へ来院されました。
今回、
私が特に重要だと感じたのは、
「吐き気が2週間続いている」
ということだけではありません。
吐き気によって2週間十分に食べることができず、実際に2kg体重が減っていたこと
です。
症状が始まったきっかけと、
今の身体の状態は、
必ずしも同じではありません。
だからこそ、
「なぜ吐き気が始まったのか」
だけでなく、
2週間食べられなかったことで、今の身体がどうなっているのか
まで考える必要があります。
今回の症例|薬の変更後から吐き気が続いた女子高校生
今回来院されたのは、
女子高校生です。
もともと、
起立性低血圧やうつの症状があり、
病院へ通院していました。
その中で、
精神科で処方されていた薬が変更になりました。
その後から、
吐き気が出現。
なかなか治まらなかったため、
再び病院を受診し、
薬はもう一度変更されています。
しかし、
その後も吐き気が残りました。
吐き気が始まってから、
約2週間。
十分に食事を取ることができず、
体重は2kg減少。
そこで、
木氣治療室へ来院されました。
なお、
今回、
薬剤名については確認できていません。
そのため、
この記事では、
「薬の副作用によって吐き気が起こった」
とは断定しません。
確認できているのは、
薬を変更したあとから吐き気が始まった
という時間的な経過です。
薬との関係については、
処方した医師へ相談する必要があります。
「薬を変えてから吐き気が出た」だけで原因を決めない
薬を変更したあとから、
吐き気が出た。
この経過を聞けば、
「薬が合わなかったのかな?」
と考えるのは自然なことです。
薬の種類によっては、
服用開始や変更のタイミングで、
吐き気などの消化器症状が現れることがあります。
また、
薬を切り替える場合には、
新しく飲み始めた薬だけではなく、
それまで服用していた薬の減量や中止に伴う変化についても考える必要があります。
だからこそ、
薬を変更したあとに体調が大きく変わった場合には、
自己判断で薬を中止したり、
量を変更したりせず、
処方医へ経過を伝えることが重要です。
今回の患者さんも、
吐き気が続いたため、
病院を再受診しています。
そして、
薬も再度変更されています。
ここは非常に大切です。
鍼灸院で、
薬の変更や中止を判断することはできません。
薬については、
処方している医師へ相談する。
そのうえで、
薬を変更しても残っている身体の不調を、鍼灸ではどのように見るのか。
ここからが、
今回の症例で私が考えたところです。
私が気になったのは「2週間で2kg痩せた」こと
今回、
特に気になったのが、
体重減少です。
2週間で、
2kg。
もちろん、
もともとの体格によって、
2kgという数字の意味は変わります。
しかし今回は、
ダイエットによる体重減少ではありません。
吐き気が続き、
十分に食べることができない。
その結果として、
体重が減っています。
ここが重要です。
食事は、
単にお腹を満たすためのものではありません。
身体を動かす。
筋肉や組織を作る。
血液を作る。
体温を保つ。
身体を回復させる。
そのために必要な材料を、
私たちは食事から取り入れています。
つまり今回、
私が診ているのは、
単に、
「吐き気がある高校生」
ではありません。
2週間、十分に食べられない状態を過ごしてきた高校生
です。
この違いは、
非常に大きいと思います。
「食べられない」は吐き気以上に確認したいこと
本人にとって、
最もつらいのは、
「気持ち悪い」
という感覚だと思います。
もちろん、
吐き気の程度も確認します。
しかし、
臨床では、
それだけでは足りません。
食事は取れているか。
水分は取れているか。
一日にどのくらい食べているか。
食べられるものはあるか。
体重は減っていないか。
尿は出ているか。
立ったときにふらつかないか。
学校生活を送れているか。
睡眠は取れているか。
こうしたことも、
一緒に確認する必要があります。
なぜなら、
吐き気そのものだけではなく、
吐き気によって食事や水分が取れない状態が続くこと
が、
身体に大きな影響を与えるからです。
今回、
もともと起立性低血圧があるという背景もあります。
そのため、
食事量や水分摂取量が低下しているのであれば、
ふらつき。
立ちくらみ。
目の前が暗くなる。
倦怠感。
などが以前より強くなっていないかも、
確認する必要があります。
吐き気が2週間続いている場合は鍼灸だけで判断しない
吐き気が続き、
十分に食事が取れず、
体重まで減少している。
このような場合、
「鍼灸で吐き気を取ればいい」
という問題ではありません。
医学的に原因を確認することが大切です。
吐き気には、
薬の影響だけではなく、
胃腸の問題。
感染症。
脱水。
頭痛や片頭痛に伴うもの。
自律神経に関係するもの。
精神的な負担に伴うもの。
その他の身体的な問題。
など、
さまざまな原因があります。
今回、
薬を変更したあとから始まったという経過は、
重要な情報です。
しかし、
それだけで、
「薬が原因」
と断定することはできません。
病院で必要な評価を受けることと、
鍼灸で身体全体を見ることは、
どちらか一方を選ぶものではありません。
東洋医学では「吐き気=胃」とは考えなかった
では、
今回の患者さんを、
東洋医学ではどのように考えたのでしょうか。
吐き気。
食欲低下。
食事が取れない。
こうした症状があると、
「胃が悪いのでは?」
と思うかもしれません。
もちろん、
胃腸の状態は確認します。
しかし、
木氣治療室では、
「吐き気だから胃」
というように、
症状と臓腑を一対一で結びつけるわけではありません。
今回、
脈を確認すると、
「気燥痰燥」
という状態でした。
そして、
五臓では、
「腎」
に変化がみられました。
ここが、
今回の症例で非常に重要なところです。
「気燥痰燥」とは?
気燥痰燥。
一般の方には、
ほとんど聞いたことがない言葉だと思います。
まず、
「燥」から考えてみます。
燥という文字には、
乾くという意味があります。
東洋医学では、
身体には適度な「潤い」が必要だと考えます。
口や喉。
皮膚。
胃腸。
便。
身体のさまざまな組織。
これらが正常に働くためには、
適度な潤いが必要です。
東洋医学では、
身体を潤すものを、
「津液」
という考え方で捉えます。
津液が十分にあり、
必要な場所へ適切に巡ることで、
身体は正常な状態を保ちやすくなります。
反対に、
身体を潤すものが不足したり、
うまく巡らなくなったりすると、
「燥」という状態として捉えることがあります。
2週間食べられなかった身体と「燥」
今回、
2週間、
十分に食事を取ることができませんでした。
食事というと、
「エネルギーを取るもの」
というイメージが強いと思います。
しかし、
東洋医学では、
飲食物から、
身体に必要な、
気。
血。
津液。
などが作られていくと考えます。
つまり、
食事や水分は、
身体を動かすだけでなく、
身体そのものを維持するための材料でもあります。
今回、
2週間で2kg体重が減っていました。
この経過と、
脈に現れていた「燥」。
私は、
この二つを切り離さずに考えました。
ただし、
「2週間食べられなかったから気燥痰燥になった」
と因果関係を断定しているわけではありません。
実際の身体の経過と、
その日に確認した脈が、
どのように重なっているのか。
そこを見ることが大切です。
「気燥」とは何か?
東洋医学の「気」は、
身体を動かすさまざまな働きと関係する概念です。
呼吸する。
食べたものを消化する。
身体を温める。
血液や水分を巡らせる。
身体を守る。
こうした生命活動を、
東洋医学では「気」という視点から考えます。
今回の脈では、
そこに「燥」が重なっていました。
そのため私は、
単なる疲労だけではなく、
身体を動かす働きと、身体を潤すものとのバランス
まで含めて考えました。
「痰燥」なのに、なぜ痰と乾燥が一緒なのか?
もう一つ、
今回特徴的だったのが、
「痰燥」です。
「痰」と聞くと、
咳をしたときに出る痰を想像すると思います。
しかし、
東洋医学の「痰」は、
それだけではありません。
身体の水分が正常に巡らず、
本来とは違う形で停滞したものを、
広い意味で「痰」として考えることがあります。
すると、
「乾燥しているのに、水分が停滞するの?」
という疑問が出てきます。
東洋医学では、
身体の潤いが不足していることと、水分の巡りが悪いことは同時に起こり得る
と考えます。
身体に水分が存在することと、
その水分が、
必要な場所で、
必要な形で働いていることは、
同じではありません。
必要なところには足りない。
一方で、
うまく処理できないものが停滞している。
このような状態も考えます。
だからこそ、
「痰」と「燥」は、
必ずしも矛盾するものではありません。
なぜ「胃」ではなく「腎」だったのか?
ここが、
今回の症例で、
特に興味深いところです。
吐き気。
食欲低下。
食事が取れない。
このような症状を見ると、
東洋医学を知っている方ほど、
「脾胃では?」
と思うかもしれません。
もちろん、
胃腸の状態は重要です。
しかし、
実際に脈を確認したとき、
今回中心として現れていたのは、
「腎」
でした。
私は、
吐き気という症状に合わせるために、
脈の状態を無理に脾胃へ置き換えることはしません。
症状から身体を決めるのではなく、その日に現れている脈から身体を考える。
ここを大切にしています。
東洋医学の「腎」は腎臓そのものではない
東洋医学の腎は、
西洋医学の腎臓そのものを指しているわけではありません。
東洋医学では、
腎は、
成長。
発育。
生殖。
水分。
骨。
耳。
そして、
生命活動の根本的な働き。
などと関係すると考えられてきました。
特に今回、
患者さんは高校生です。
まだ、
身体が成長している時期です。
そこへ、
2週間十分に食べられない状態が続き、
体重も減っている。
そして、
脈では腎に変化が現れていました。
私は、
こうした情報を、
一つずつ切り離さずに考えました。
ただし、
「腎の脈だから腎臓が悪い」
という意味ではありません。
腎臓の病気の有無は、
必要な医学的検査によって判断するものです。
もともとの起立性低血圧やうつだけで説明しない
今回の患者さんには、
もともと、
起立性低血圧。
うつ。
という背景があります。
こうした既往があると、
今回の吐き気についても、
「自律神経では?」
「精神的な問題では?」
と考えたくなるかもしれません。
しかし、
最初からそこへ結びつけるべきではないと考えています。
特に、
精神的な症状で通院している方が、
吐き気。
頭痛。
めまい。
動悸。
腹痛。
倦怠感。
などを訴えると、
「精神的なものかもしれない」
と考えられることがあります。
もちろん、
心と身体は関係しています。
精神的な負担が、
身体症状として現れることもあります。
しかし、
だからといって、
新しく出てきた身体症状を、
すべて心の問題として扱っていいわけではありません。
今回、
実際に食事量が低下し、
2週間で2kg体重が減っています。
これは、
身体に起きている変化です。
心の状態も見る。
身体の状態も見る。
薬については医師へ相談する。
そして、
鍼灸ではその日の身体を診る。
一つの原因にすべてを押し込めないこと
が大切です。
同じ女子高校生、同じ吐き気でも身体は違う
以前、
木氣治療室へ来院した別の女子高校生では、
電車の中で、
目の前が真っ暗になり、
動悸や吐き気が出て、
ホームで倒れました。
その患者さんでは、
来院時に、
強いむくみ。
足の冷え。
お腹の張り。
がみられました。
脈は、
「虚労寒湿」。
五臓では、
「脾」。
身体には、
水分の停滞を考える「湿」がみられました。
一方、
今回の女子高校生は、
吐き気が2週間続き、
十分に食事が取れず、
2kg体重が減少。
脈は、
「気燥痰燥」。
五臓では、
「腎」。
こちらでは、
「燥」が大きな特徴として現れていました。
同じ、
女子高校生。
同じ、
吐き気。
どちらも、
自律神経との関係を考えたくなる背景があります。
それでも、
実際に身体を診ると、
一人は「湿」。
もう一人は「燥」。
まったく違います。
これが、
東洋医学で、
病名や症状名だけから施術を決めない理由の一つです。
「吐き気に効くツボ」から施術を始めない
鍼灸について検索すると、
「吐き気に効くツボ」
がたくさん出てきます。
もちろん、
吐き気に対して使われることの多いツボはあります。
しかし、
木氣治療室では、
「吐き気だからこのツボ」
という形だけで、
施術を決めることはしていません。
もし、
症状だけでツボを決めるのであれば、
先ほどの二人の女子高校生は、
同じ施術になるかもしれません。
しかし、
実際の身体は、
まったく違いました。
だからこそ、
症状だけではなく、
その症状が出るまでの経過。
食事。
睡眠。
便通。
月経。
冷え。
発汗。
生活環境。
そして、
脈。
こうした情報を重ねながら、
その日の身体を考えます。
今回の施術で考えたいこと
今回、
来院時の脈は、
気燥痰燥・腎。
そして、
約2週間、
十分に食事が取れず、
2kg体重が減少していました。
この状態で、
私が考えるのは、
「どうすれば吐き気だけを止められるか」
ではありません。
消耗している可能性のある身体が、再び食べられる状態へ戻っていくためには何が必要なのか。
という視点です。
身体の潤い。
水分の巡り。
胃腸が食事を受け入れられる状態。
疲労。
睡眠。
精神的な負担。
こうしたものを、
脈と合わせながら考えていきます。
「燥=水をたくさん飲めばいい」ではない
燥と聞くと、
「水分をたくさん取ればいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、
東洋医学でいう潤いは、
単純な水分摂取量だけではありません。
水分を飲んでも、
身体が適切に受け入れ、
必要なところへ巡らせる必要があります。
また、
今回のように吐き気がある場合、
一度に大量に飲むことで、
かえって気持ち悪くなることもあります。
そのため、
「燥だから水を増やす」
「痰だから水を減らす」
という単純な考え方にはなりません。
大切なのは、
身体が食事や水分を受け入れ、それを適切に利用できる状態へ戻っていくこと
です。
食べられていない身体では刺激量も考える
今回のように、
2週間十分に食べられず、
体重が減っている状態では、
鍼灸の刺激量にも注意します。
鍼灸は、
刺激を強くすればするほど、
効果が高くなるものではありません。
身体が消耗しているときには、
強過ぎる刺激が、
かえって負担になることもあります。
年齢。
体格。
食事量。
体重減少。
その日の体調。
脈。
刺激への反応。
こうしたものを確認しながら、
刺激量を考えます。
木氣治療室では、
鍼を深く刺すことだけを、
施術とは考えていません。
散鍼やていしんなども用いながら、
身体に合わせて刺激量を調整します。
大切なのは、
どれだけ強く刺激したかではなく、その日の身体に必要な刺激だったか
ということです。
次回来院時に「吐き気」以外で確認したいこと
今回の患者さんでは、
今後の経過を見るときにも、
「吐き気がゼロになったか」
だけでは判断しません。
もちろん、
吐き気がどう変化したかは確認します。
しかし、
それと同じくらい、
食べられるようになったか。
食事量は増えているか。
水分を取れるか。
体重減少は止まったか。
立ったときのふらつきはないか。
学校生活を送れているか。
睡眠は取れているか。
便通はどうか。
気分はどうか。
そして、
脈がどう変化しているか。
こうしたことを確認します。
今回の場合、
特に重要なのは、
「少しずつでも食べられるようになっているか」
です。
「吐き気は少し残るけれど食べられる」も大切な変化
症状の変化は、
ゼロか100かではありません。
例えば、
吐き気そのものは、
まだ少し残っている。
しかし、
以前はほとんど食べられなかったのに、
朝食を少量食べられるようになった。
昼食も少し食べられた。
水分が以前より取れるようになった。
食べたあとに、
吐き気が強くならなくなった。
こうした変化も、
非常に重要です。
症状の点数だけではなく、
生活の中で「食べる」という行動を、身体が再び受け入れられるようになっているか
を見ていきます。
毎回「気燥痰燥・腎」とは限らない
初診時の脈が、
気燥痰燥・腎だった。
だから、
次回も同じ施術をする。
とは限りません。
身体は変化します。
食事が取れるようになる。
水分が取れるようになる。
吐き気が減る。
睡眠が変わる。
疲労が回復する。
そうすれば、
脈も変化する可能性があります。
反対に、
さらに食べられなくなれば、
別の変化が現れるかもしれません。
だからこそ、
木氣治療室では、
初診時の状態へ、
その後の身体を当てはめ続けません。
毎回、
脈を確認します。
そして、
その日の身体に合わせて施術を考える
ことを大切にしています。
家庭では「無理にたくさん食べさせる」より食べられるものを探す
子どもが食べられず、
体重まで減ってくると、
保護者の方は心配になります。
「何でもいいから食べて」
「もう少し食べないと」
と言いたくなると思います。
もちろん、
栄養を取ることは大切です。
しかし、
強い吐き気がある状態で、
一度にたくさん食べることで、
さらに気持ち悪くなることがあります。
まずは、
今、
何なら食べられるのか。
どのくらいなら食べられるのか。
を確認します。
一度にたくさんではなく、
少量を複数回に分ける。
においの強くないものを選ぶ。
脂っこいものを無理に食べない。
本人が食べやすい温度にする。
なども一つの方法です。
ただし、
食べられない状態が続いている場合には、
家庭での食事の工夫だけで、
長期間様子を見ないでください。
「身体にいいもの」にこだわり過ぎなくてもいい
体調を崩すと、
栄養のあるものを食べさせたい。
身体にいいものを食べさせたい。
と思うかもしれません。
しかし、
吐き気が強いときには、
普段なら身体に良い食事でも、
受け付けないことがあります。
まずは、
本人が比較的受け入れやすいものを、
少量から試します。
例えば、
おかゆ。
やわらかく煮たうどん。
具材をシンプルにしたスープ。
豆腐。
卵料理。
食べやすい果物。
ゼリー状の食品。
などです。
ただし、
これらが「吐き気を治す食品」という意味ではありません。
食べられるものには個人差があります。
まずは、
身体が受け入れられるものから、
少しずつ戻していくことが大切です。
冷たいものしか食べられない場合は?
東洋医学では、
胃腸を冷やし過ぎないことを考える場合があります。
しかし、
「冷たいものは絶対に禁止」
と考える必要はありません。
吐き気が強く、
冷たいゼリーや飲み物なら、
比較的口にできる。
そのような場合もあります。
食べられない状態で、
温かいものを無理に食べ、
さらに吐き気が強くなるのであれば、
意味がありません。
まずは、
本人が何なら受け入れられるのか。
そこから考えます。
身体が回復してきたら、
徐々に普段の食事へ戻していく。
柔軟に考えてよいと思います。
水分が取れているかは必ず確認する
食事が取れないときに、
特に確認してほしいのが、
水分です。
一度にたくさん飲むと気持ち悪くなるのであれば、
少量ずつ飲む。
一口飲んで、
少し時間を空ける。
また一口飲む。
という方法もあります。
食事量が少ない場合には、
食事から取っていた水分や電解質も少なくなります。
そのため、
「水を飲んでいるから大丈夫」
だけではなく、
尿の回数。
尿の色。
ふらつき。
口の乾き。
身体のだるさ。
なども確認してください。
水分がほとんど取れない。
飲んでも吐いてしまう。
尿が明らかに少ない。
ぐったりしている。
このような場合には、
家庭で様子を見続けず、
医療機関へ相談してください。
「学校へ行けた」を回復の基準にしない
高校生の場合、
保護者の方が悩むのが、
学校だと思います。
熱はない。
吐き気はある。
でも、
行こうと思えば行けるかもしれない。
そうすると、
「とりあえず学校へ行ってみよう」
となることがあります。
しかし、
今回のように、
2週間十分に食べられず、
体重も減っている状態では、
身体が回復する時間も必要です。
学校へ行けた。
でも、
帰宅すると何もできない。
すぐに寝てしまう。
夕食が食べられない。
翌朝さらに起きられない。
このような状態なら、
身体にとって、
学校生活の負担がまだ大きい可能性があります。
学校へ行けたかではなく、学校生活を送ったあとにも身体が回復できているか。
ここまで見てほしいと思います。
薬を変更したあとの変化は記録しておく
今回のように、
薬を変更したあとに体調が変化した場合には、
簡単で構わないので、
経過を記録しておくことをおすすめします。
例えば、
・薬を変更した日
・吐き気が始まった日
・吐き気が強い時間帯
・食事量
・嘔吐の有無
・体重
・睡眠
・気分の変化
・学校へ行けたか
・再度薬を変更した日
・再変更後の身体の変化
などです。
「ずっと気持ち悪いです」
だけより、
「薬を変更したあとから吐き気が始まり、2週間続いています」
「食事量がかなり減り、2kg痩せました」
「薬を再度変更しても吐き気が残っています」
と伝えられる方が、
医師も経過を把握しやすくなります。
自己判断で薬をやめない
吐き気が続けば、
「この薬を飲むから気持ち悪いのでは?」
と考えるのは自然です。
しかし、
薬の種類によっては、
急に中止したり、
量を変えたりすることで、
別の症状が出ることがあります。
薬について不安がある場合には、
自己判断で変更せず、
処方医へ相談してください。
今回のように、
「薬を変更したあとから吐き気が出た」
「食事が取れず2kg痩せた」
「薬を再度変更しても吐き気が残っている」
という経過は、
そのまま医師へ伝えることが大切です。
保護者の方に確認してほしい「いつもとの違い」
高校生になると、
自分の体調を、
保護者へ細かく話さなくなることもあります。
だからこそ、
病名を探すより、
普段との違いを見てください。
例えば、
以前より食事量が減った。
好きなものも食べない。
水分を取らなくなった。
体重が減っている。
顔色が悪い。
口や唇が乾燥している。
立つとふらつく。
朝起きられない。
以前より疲れやすい。
学校から帰るとすぐ寝る。
便秘になった。
尿の回数が減った。
眠れなくなった。
気分の落ち込みが強くなった。
イライラが増えた。
学校へ行くことがさらに難しくなった。
こうした変化です。
一つだけではなく、
複数の変化が重なっていないかを、
確認してみてください。
精神面の変化は処方医にも伝える
今回の患者さんは、
もともとうつの症状で、
病院へ通院しています。
そのため、
薬の変更前後で、
気分の落ち込みが強くなった。
不安が強くなった。
眠れなくなった。
極端にイライラする。
普段と明らかに様子が違う。
学校生活がさらに難しくなった。
などがあれば、
吐き気とは別に、
処方医へ伝える必要があります。
特に、
自分を傷つけたい、
生きていたくない、
などの訴えがある場合には、
身体症状の改善を待たず、
保護者から速やかに医療機関へ相談してください。
セルフケアとして使いやすい3つのツボ
ここからは、
吐き気や胃腸の不調があるときに、
家庭で使いやすいツボを紹介します。
ただし、
今回のように、
食事が取れず、
体重まで減っている場合には、
ツボ押しだけで様子を見ることはおすすめしません。
あくまで、
必要な医療を受けながら行うセルフケアです。
内関(ないかん)
【場所】
手首の内側。
手首のしわから、
指3本分ほど肘側へ上がったところ。
中央にある二本の腱の間です。
【こんなときに】
・吐き気
・胃のむかつき
・乗り物酔い
・緊張に伴う胃の不快感
反対側の親指で、
痛くない程度に、
ゆっくり刺激します。
足三里(あしさんり)
【場所】
膝のお皿の外側から、
指4本分ほど下。
すねの骨の少し外側です。
【こんなときに】
・食欲低下
・胃腸の不調
・疲労感
・身体が消耗していると感じるとき
胃腸や全身の調子を整える目的で、
古くから使われてきたツボです。
太渓(たいけい)
【場所】
内くるぶしと、
アキレス腱の間にあるくぼみです。
【こんなときに】
・疲労感
・冷え
・身体の消耗が気になるとき
太渓は、
東洋医学で「腎」と関係する代表的なツボの一つです。
ただし、
今回の脈が腎だったから、
「太渓を押せば今回の吐き気が治る」
という意味ではありません。
セルフケアとして、
やさしく刺激する程度にしてください。
よくある質問
Q. 薬を変えてから吐き気が出たら、副作用ですか?
薬との関連は、
確認する必要があります。
しかし、
薬剤名。
服用量。
変更方法。
服用期間。
ほかの薬。
身体の状態。
などが分からなければ、
「薬の副作用です」
と断定することはできません。
自己判断で薬を中止せず、
吐き気が始まった時期や、
食事量、体重減少などを、
処方医へ伝えてください。
Q. 薬をもう一度変更したのに、なぜ吐き気が残るのでしょうか?
原因は一つとは限りません。
薬を変更したあとも、
症状がすぐに消えるとは限りませんし、
薬とは別の原因が関係している可能性もあります。
今回の症例では、
約2週間十分に食べられず、
2kg体重が減っていました。
木氣治療室では、
最初のきっかけだけではなく、
その期間を過ごしたことで、
現在の身体がどうなっているのかも確認します。
Q. 吐き気があるなら胃のツボを使うのですか?
症状だけで、
使用するツボを決めるわけではありません。
今回、
脈では、
気燥痰燥。
五臓では、
腎。
という状態がみられました。
そのため、
「吐き気=胃」
と決めつけず、
生活背景や身体所見、脈を合わせて、
その日の身体全体を考えます。
Q. 「腎」と言われたら腎臓が悪いのでしょうか?
違います。
東洋医学の「腎」は、
西洋医学の腎臓そのものではありません。
成長。
発育。
水分。
生殖。
身体の根本的な働き。
などを含めて考える、
伝統医学独自の概念です。
腎臓の病気の有無については、
医学的な検査によって判断します。
Q. 起立性低血圧があるので、それが吐き気の原因でしょうか?
起立時の血圧変化などに伴い、
吐き気やふらつきが起こることはあります。
しかし、
今回の吐き気の原因を、
もともとの起立性低血圧だけで説明することはできません。
新しく出てきた症状については、
「もともとある症状だから」
と決めつけないことが大切です。
Q. うつがあるので、精神的な吐き気ではないですか?
精神的な負担によって、
吐き気などの身体症状が現れることはあります。
しかし、
「うつがある=今回も精神的な原因」
とは判断できません。
今回、
実際に食事量が減り、
2週間で2kg体重が減少しています。
身体面についても、
きちんと確認する必要があります。
Q. 食べられないときは何を食べればいいですか?
「これを食べれば治る」
というものはありません。
一度に大量に食べるより、
本人が比較的食べやすいものを、
少量ずつ試します。
ただし、
食事が取れない状態が続く。
体重が減り続ける。
水分も十分に取れない。
という場合には、
食事の工夫だけで様子を見ず、
医療機関へ相談してください。
こんな場合は早めに医療機関へ
今回のような症状では、
吐き気の強さだけではなく、
食べられているか、飲めているか、身体を維持できているか
を見ることが大切です。
特に、
・水分がほとんど取れない
・飲んでも吐いてしまう
・尿が明らかに減っている
・ぐったりしている
・立てないほどふらつく
・意識が遠のく、倒れる
・強い腹痛がある
・吐血や血便がある
・激しい頭痛や手足の動かしにくさなどを伴う
・高熱など別の強い症状がある
・体重がさらに減り続けている
・食事がほとんど取れない状態が続く
・薬を変更してから精神状態が大きく変化した
・日常生活や学校生活を送れないほど悪化している
といった場合には、
早めに医療機関へ相談してください。
木氣治療室で臨床していて思うこと
今回の症例で、
私が最も印象に残ったのは、
「吐き気」そのものだけではありませんでした。
薬を変更したあとから、
吐き気が始まった。
病院へ行き、
薬を再度変更した。
それでも、
吐き気が残っていた。
その間、
約2週間、
十分に食べられなかった。
そして、
2kg痩せていた。
来院したときに脈を診ると、
気燥痰燥。
五臓では、
腎。
という状態でした。
私は、
ここで、
「吐き気だから胃を治療しよう」
とは考えませんでした。
なぜなら、
目の前にいるのは、
単に吐き気がある患者さんではなく、
2週間食べられない状態を過ごしてきた患者さん
だからです。
症状には、
始まったきっかけがあります。
しかし、
その症状が長く続けば、
身体はさらに変化します。
つまり、
最初の原因と、
今の身体の状態が、
必ずしも同じとは限りません。
今回でいえば、
薬の変更と、
吐き気が始まった時期が重なっている。
これは、
処方医へ伝えるべき大切な情報です。
一方で、
私が鍼灸師として診るときには、
「薬が原因かどうか」
だけを考えているわけではありません。
今、
食べられているのか。
身体は消耗していないか。
体重はどうか。
睡眠はどうか。
起立したときはどうか。
精神面はどうか。
そして、
脈はどうなっているのか。
こうした情報を重ねて、
今の身体を考えます。
「なぜ始まったのか」と、「今の身体がどうなっているのか」は分けて考える。
これは、
今回のように、
症状が長く続いている患者さんを診るうえで、
非常に大切だと思っています。
まとめ|同じ「吐き気」でも、身体は一人ひとり違う
今回紹介したのは、
もともと起立性低血圧やうつの症状で、
病院へ通院していた女子高校生です。
精神科で処方されていた薬を変更したあとから、
吐き気が続くようになりました。
その後、
病院を再受診し、
薬は再度変更。
しかし、
吐き気は残りました。
約2週間、
十分に食事を取ることができず、
体重は2kg減少。
その状態で、
木氣治療室へ来院しました。
脈は、
「気燥痰燥」。
五臓では、
「腎」
に変化がみられました。
今回、
私が大切だと考えたのは、
「薬を変えてから吐き気が出た」
ということだけではありません。
その吐き気が2週間続いたことで、今の身体がどのような状態になっているのか。
ここです。
吐き気。
食事量。
体重。
水分。
睡眠。
立ちくらみ。
学校生活。
精神状態。
そして、
脈。
これらを一つずつ切り離すのではなく、
一人の身体の中で起きている変化として見ていきます。
同じ「吐き気」でも、
身体は一人ひとり違います。
前回紹介した女子高校生では、
強いむくみ。
足の冷え。
お腹の張り。
そして脈では、
虚労寒湿・脾。
がみられました。
今回の女子高校生では、
2週間食べられない。
2kg体重が減る。
そして脈では、
気燥痰燥・腎。
でした。
同じ女子高校生。
同じ吐き気という症状があっても、
身体はまったく違います。
だからこそ、
木氣治療室では、
「吐き気にはこのツボ」
「自律神経にはこのツボ」
というように、
症状名だけから施術を決めません。
その日の身体を診る。
脈を診る。
生活を聞く。
症状が起こるまでの経過を見る。
そして、
その身体に合わせて施術を組み立てる。
これを大切にしています。
今回のように、
食事が取れない状態や体重減少が続いている場合には、
鍼灸だけで経過を見るものではありません。
薬については処方医へ相談し、
必要な医学的評価を受ける。
そのうえで、
今の身体に残っている不調を、
東洋医学の視点から整えていく。
医療機関と鍼灸を、
どちらか一方にする必要はありません。
症状だけではなく、
その人の「今の身体」を見ること。
今回の症例から、
改めて大切だと感じています。
※本記事は実際の臨床例をもとに、個人が特定されないよう一部情報を調整して紹介しています。「気燥」「痰燥」「腎」などは東洋医学における身体の捉え方であり、西洋医学の診断名や今回の吐き気の医学的原因を示すものではありません。薬剤名が不明なため、薬が吐き気の原因だったとは断定していません。処方薬の変更・減量・中止は自己判断で行わず、処方した医師へ相談してください。鍼灸は必要な医学的検査や治療、薬物療法の代わりになるものではありません。
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