胃酸逆流・膨満感・吐き気が続くのに検査は異常なし~79歳男性の胃腸症状を東洋医学から考える~

「胃の検査では異常がないと言われた」
「でも、毎日お腹が気持ち悪い」
「食べるとお腹が張ってしまう」
「胃酸が上がってくる感じが続いている」
このようなお悩みで来院される方がいます。
今回ご紹介するのは、胃酸の逆流や強い腹部不快感を訴えて木氣治療室へ来院された79歳男性の症例です。
病院では必要な検査を受けていますが、症状を説明できる明らかな異常は見つかっていません。
しかし、ご本人が感じている不快感は強く、食事や睡眠など日常生活にも影響していました。
東洋医学では、このようなときに「胃だけ」を見るのではありません。
食欲、便通、睡眠、冷え、のぼせ、乾燥、むくみ、精神的な負担、そして脈。
さまざまな情報を重ねながら、
「なぜ今、この方の身体で胃腸症状が続いているのか」
を考えていきます。
2024年夏、新型コロナ感染後から始まった胃腸症状
胃腸の不調が始まったのは2024年8月頃でした。
その直前の7月末に新型コロナウイルス感染症を発症。
感染症状そのものは改善しましたが、その後から腹部の不快感が残るようになりました。
主な症状は、
・胃酸が上がってくるような不快感
・胸焼け
・腹部膨満感
・吐き気
・胃痛
・食欲低下
・便秘
です。
特につらいのが、食後の膨満感でした。
食事量は決して多くありません。
それでも食べるとお腹が張り、不快感が強くなります。
そのため食事量も減り、現在は「食べられるものを食べる」という状態になっていました。
食べたいと思えるものもほとんどありません。
その中で唯一、
「メロンだけは美味しく感じる」
というお話がありました。
このような「何なら食べられるのか」「美味しいと感じるものはあるのか」という情報も、身体の状態や今後の変化を確認する大切な材料になります。
食べると苦しいことで起こる悪循環
食事をするとお腹が張る。
すると、
「食べたらまた苦しくなる」
という不安が出てきます。
食事量が減る。
↓
身体を維持するための栄養が十分に取れなくなる。
↓
体力が落ちる。
↓
さらに食事を受け取りにくくなる。
このような悪循環につながる可能性があります。
特に79歳という年齢を考えると、胃酸の逆流だけではなく、
「身体が食事を受け取れる状態を取り戻せるか」
という視点も非常に重要になります。
胃腸以外にも多くの症状がありました
問診を進めると、胃腸以外にもさまざまな症状がありました。
・身体全体の乾燥
・口の乾燥
・むくみ
・寝汗
・のぼせ
・足の冷え
・動悸
・息苦しさ
・夜間尿
・不安
・憂鬱
・ストレス
・眠りが浅い
・朝起きても寝足りない
便秘については、下剤を使用すると少し排便できる状態でした。
一見すると、
胃酸逆流は胃。
便秘は腸。
動悸は心臓。
不眠や不安は自律神経。
足の冷えは冷え性。
と、それぞれ別の症状に見えます。
しかし東洋医学では、
一人の身体に同時に起きている変化
として考えていきます。
「喉は渇く。でも水を飲みたいとは思わない」
今回、問診の中で特に印象的だったのが、
「喉は渇くけれど、水分を取りたいとは思わない」
という訴えです。
身体や口は乾燥しています。
便秘もあります。
それなら単純に水分が不足しているようにも思えます。
しかし同時に、むくみもあります。
東洋医学では、身体を潤す正常な水分を「津液(しんえき)」と考えます。
ここで重要なのは、
「身体に水分があるか、ないか」
だけではありません。
必要な場所へ水分が届いているのか。
不要な場所に停滞していないか。
身体の中を適切に巡っているのか。
ということまで考えます。
「乾燥しているのに、むくむ」は矛盾ではない
皮膚や口は乾いている。
便も出にくい。
しかし身体にはむくみがある。
一見、矛盾しているように感じます。
しかし、
必要な場所に水分があることと、不要な場所に水分が停滞していることは別です。
そのため、
乾燥しているから「とにかく水を飲む」。
むくんでいるから「水を減らす」。
という単純な判断では身体を捉えきれないことがあります。
今回のような細かな身体の感覚も、東洋医学では大切な診察情報になります。
のぼせるのに足は冷たい
もう一つ特徴的だったのが、
上半身ののぼせと足の冷え
です。
寝汗もあります。
「のぼせがあるなら熱」
「足が冷たいなら冷え」
と一つだけを見て判断することはできません。
身体の上部には熱感がある。
一方、下半身には冷えがある。
このように、身体の中で寒熱の偏りが生じていることがあります。
今回の身体を考えるうえでも、この「のぼせと足冷えの同居」は重要な情報でした。
症状が始まる以前から続いていた強い精神的負担
今回、もう一つ重要だったのが、長期間にわたる精神的ストレスです。
過去に仕事上の人間関係で非常に大きな出来事があり、信頼していた人物との問題が裁判にまで発展しました。
本人にとっては、
「信頼していた相手に裏切られた」
と感じるほど強い経験だったそうです。
これは胃腸症状が始まるより、かなり以前の出来事です。
したがって、
「昔のストレスが今回の胃症状の原因です」
と断定することはできません。
しかし、長年にわたって強い精神的負担を抱えてきたことは、身体を考えるうえで無視できません。
東洋医学では、怒り、不安、憂い、思い悩むこと、恐れなどの感情も、長期間続けば身体へ影響すると考えます。
ストレス=自律神経だけでは終わらせない
胃の不調とストレスについて調べると、
「自律神経の乱れ」
という言葉をよく見かけます。
もちろん、現代医学でも脳と消化管は相互に影響し合っており、心理的ストレスと消化器症状には関係があります。
ただ木氣治療室では、
「自律神経が乱れていますね」
だけで終わらせず、
何が負担になっているのか。
いつから続いているのか。
睡眠はどうなのか。
食事は取れているのか。
冷えや熱はどうなのか。
便通はどうなのか。
そして脈はどうなっているのか。
というところまで確認します。
新型コロナ感染だけを原因とは考えませんでした
今回の症状は、新型コロナ感染後から始まっています。
しかし、
「コロナ後に始まった=すべてコロナが原因」
とは考えていません。
この方には、
長年の精神的負担。
79歳という年齢。
食欲低下。
睡眠の浅さ。
便秘。
乾燥。
むくみ。
のぼせ。
足の冷え。
など、さまざまな背景があります。
感染症が一つのきっかけになった可能性を考えつつ、それ以前から存在していた身体の状態も含めて考える必要があります。
三つの方向から原因を整理する
東洋医学には、身体へ影響する要因を大きく三つの方向から考える方法があります。
今回の男性に当てはめると、
「外から受けた影響」として、新型コロナ感染など。
「感情による影響」として、長年のストレス、不安、憂鬱など。
そして生活に関係するものとして、食事量の低下、睡眠、加齢など。
このように整理できます。
慢性的な不調では、
「原因はこれです」
と一つだけに決められないことも少なくありません。
複数の負担が重なった結果として、現在の身体がある。
今回もそのように考えました。
病院の検査では明らかな異常なし
この男性は、病院で必要な検査を受けています。
現時点では、症状を説明するような明らかな異常は見つかっていません。
これは非常に重要です。
重大な病気が確認されなかったことは安心材料の一つです。
一方で、
「検査が正常=症状がない」
ではありません。
本人は実際に、
食べると苦しい。
胃酸が上がる。
吐き気がする。
便が出にくい。
眠れない。
という生活を送っています。
木氣治療室では病院での検査を否定するのではなく、
医学的に確認すべきものを確認したうえで、東洋医学から身体全体をどう捉えられるか
を考えます。
検査で異常がない胃の不調では「機能」の問題も考える
胃もたれ、食後の膨満感、早期満腹感、みぞおちの痛みなどが続いている一方で、症状を説明できる明らかな器質的異常が見つからない場合、西洋医学では「機能性ディスペプシア」などが検討されることがあります。
また、胸焼けや逆流感が中心の場合には、胃食道逆流症など別の病態が検討されることもあります。
ただし、症状だけで自己診断するものではありません。
特に今回のような高齢者では、
「以前検査したから大丈夫」と考え続けるのではなく、症状の変化に応じて再評価すること
も重要です。
今回の脈は「浮・実・数」
今回、脈を確認すると、
気口・人迎ともに浮いており、実で、数の脈
がみられました。
「浮」は脈が比較的表面で感じられる状態。
「実」は力がある状態。
「数」は脈が速い状態です。
ただし、
「浮だから○○」
「数だから熱」
と、一つの脈だけで身体を決めるわけではありません。
患者さんの症状。
発症経過。
年齢。
精神的な負担。
寒熱。
食欲。
便通。
睡眠。
こうした情報と脈を重ねて判断します。
今回私は、
これらを総合して、
「労熱・表熱」
という状態を考えました。
「労熱」とは?
ここでいう「労」は、
単純に仕事のし過ぎという意味だけではありません。
身体的、精神的な負担が長期間続き、その影響によって熱性の反応が現れている状態を考えます。
今回の男性には、
長年の精神的負担。
不安。
憂鬱。
浅い睡眠。
寝汗。
のぼせ。
などがあります。
さらに脈では実・数という反応がありました。
これらを一つずつ重ねながら、現在の身体を考えました。
「表熱」は体温が高いという意味ではありません
「表熱」と聞くと、
「身体の表面が熱い」
「発熱している」
と思われるかもしれません。
しかし、今回ここで使っている「表熱」は、単純な体温の話ではありません。
気口・人迎ともに浮き、
さらに実・数という反応がある。
そこへ症状や生活背景を合わせ、
身体の比較的表層に熱性の反応が現れている状態として考えました。
79歳でも「実」の脈が出ていた
今回、臨床的に興味深かったのが、
79歳という年齢でありながら、脈に「実」が現れていたこと
です。
高齢だから虚。
食べられないから虚。
体力が落ちているから虚。
と決めてしまえば、この反応を見落としてしまいます。
一方で、
実脈だから身体全体が充実しているわけでもありません。
実際に五臓を確認すると、
腎の弱り
がみられました。
つまり、
身体の土台には弱っている部分がある。
しかし同時に、現在は強い熱性の反応も現れている。
という状態です。
東洋医学では、
「虚か実か」の二択ではなく、どこが弱り、どこに強い反応が出ているのか
を考えることが大切です。
胃が悪いのに、なぜ「腎」を見るのか?
今回の主訴は胃腸症状です。
それなのに五臓では腎の弱りがみられました。
東洋医学では、
「症状が出ている場所=身体の根本的な弱り」
とは限りません。
東洋医学の「腎」は、西洋医学の腎臓そのものを指す言葉ではなく、
成長。
老化。
生殖。
排尿。
水分代謝。
骨。
耳。
身体の根本的な生命力。
などと関係すると考えます。
今回の男性は79歳。
さらに、
・夜間尿
・足の冷え
・寝汗
・のぼせ
・浅い睡眠
といった症状があります。
そして実際に身体を確認すると、五臓では腎の弱りがみられました。
そのため、
胃だけに目を向けるのではなく、
身体全体の土台として腎の状態も考える必要がある
と判断しました。
古典では「腎」と身体の水分をどう考えるのか
『黄帝内経』には、
「腎者水臓、主津液」
という記載があります。
簡単にいえば、
腎は身体の水分と深く関係している
という考えです。
今回の男性では、
身体や口が乾燥する。
便秘がある。
しかし同時にむくみもある。
喉は渇くけれど、水を欲しない。
という特徴がありました。
そのため、
単純な水分不足だけではなく、
津液や身体の水分の巡りという視点からも考える必要がありました。
胃酸逆流だけを狙って治療しない理由
患者さんにとって一番つらいのは胃腸症状です。
当然、その変化は重要です。
しかし木氣治療室では、
「胃酸逆流だから胃に効くツボ」
という形だけで治療を決めることはしていません。
今回の身体には、
浮・実・数という脈。
労熱・表熱。
腎の弱り。
乾燥とむくみ。
のぼせと足冷え。
不眠。
長年の精神的負担。
などが同時にあります。
そのため、
症状名からツボを決めるのではなく、
その日の身体の状態から施術を組み立てる
ことを大切にしています。
高齢者だからこそ「刺激量」も考える
鍼灸は、
強い刺激ほど効果が高いわけではありません。
今回の男性は79歳で、
食事量が減っています。
睡眠も浅く、
身体の土台には弱りもあります。
そのため、
脈に実があるからといって、
単純に強い刺激を加えるわけではありません。
木氣治療室では、散鍼やていしんなども使いながら、
年齢。
体力。
その日の脈。
食事量。
睡眠。
症状。
などを確認して刺激量を調整します。
必要なのは、
強い刺激ではなく、その日の身体に合った刺激
だと考えています。
治療でまず確認していきたいこと
今回、胃酸逆流がなくなることだけを目標にはしていません。
特に重要なのが、
食事を再び受け取れる身体になっていくか
です。
食後の膨満感が減る。
食事量が少し増える。
「何か食べたい」と思える。
「美味しい」と感じられる。
便が少しずつ出る。
眠りが深くなる。
こうした変化も重要です。
初診時に、
「メロンだけは美味しい」
という話がありました。
そのため次回以降、
「ほかにも食べたいものが出てきたか」
ということも確認したいと思っています。
一度決めた病証を固定しない
今回、初診時には労熱・表熱を考えました。
しかし、
次回も必ず同じとは限りません。
熱性の反応が落ち着く。
食欲が変わる。
睡眠が変わる。
便通が変わる。
その結果、それまで見えにくかった弱りがより明確になることもあります。
だからこそ、
一度つけた病証を固定せず、
毎回身体を確認します。
東洋医学の面白いところは、
病名だけではなく、
「今日の身体はどうなっているのか」
を診られるところにあると思っています。
今後この症例で確認していくこと
次回来院時には、
・胃酸逆流
・胸焼け
・食後の膨満感
・吐き気
・胃痛
・食欲
・食事量
・便通
・身体や口の乾燥
・水分を欲するか
・むくみ
・寝汗
・のぼせ
・足の冷え
・動悸
・息苦しさ
・夜間尿
・睡眠の深さ
・不安や憂鬱
などを確認します。
そして、
浮・実・数だった脈がどう変化したのか
も重要です。
症状と脈の両方を追うことで、
身体がどの方向へ変化しているのかを判断していきます。
胃の不快感があるときにできるセルフケア
食後の膨満感が強い方では、一度にたくさん食べると苦しくなることがあります。
そのため、
・一回の食事量を少なくする
・よく噛んでゆっくり食べる
・体調に合わせて食事を分ける
・食後すぐ横にならない
・夜遅い時間の大量の食事を避ける
などを意識してみてください。
食欲がないときに、
「栄養を取らなければ」
と無理にたくさん食べる必要はありません。
今の胃腸が受け取れる量から、少しずつ戻していくことが大切です。
食べられるものを否定し過ぎない
今回の男性は、
「メロンなら美味しい」
と感じています。
もちろん、メロンだけで必要な栄養をすべて補うことはできません。
しかし、
食欲がほとんどない方にとって、
「美味しい」
「これなら食べたい」
と思えること自体も大切です。
そこを出発点にしながら、
少しずつ食べられるものを増やしていく。
食事は、
「身体に良いものを食べなければ」
という義務だけにしないことも大切だと思います。
胸焼けがある場合に見直したい食生活
胃酸逆流や胸焼けがある方では、
脂肪分の多い食事、アルコール、香辛料、コーヒーなどで症状が悪化することがあります。
ただし、
全員が同じ食品で悪化するわけではありません。
「食べてはいけないもの」を増やし過ぎると、
今回のように食欲が落ちている方では、
さらに食べられるものが減ってしまいます。
何を食べたときに症状が強くなるのか。
自分の身体を観察することも大切です。
水分は一気に大量に飲まない
今回の男性のように、
口は乾く。
でも水を欲しくない。
さらに食後の膨満感が強い。
という方では、
大量の水分を一気に飲むと苦しくなることがあります。
脱水を避けることは重要ですが、
少量ずつ、こまめに取るなど、
身体の状態に合わせて調整してください。
長年のストレスを「忘れてください」とは言わない
今回の男性には、
何十年経っても心に残っている出来事があります。
その経験を、
「昔のことだから忘れた方がいい」
と言われても、
簡単にできることではありません。
鍼灸で過去の出来事を消すこともできません。
だからこそ、
ストレスが存在していても、
食べられる。
眠れる。
便が出る。
呼吸が楽になる。
身体が過度に緊張し続けない。
という状態へ近づけていくことが大切だと考えています。
このような症状は医療機関へ
「以前検査で異常がなかったから」
と、すべての症状を様子見してよいわけではありません。
特に、
・体重が減り続ける
・食事や水分がほとんど取れない
・繰り返し嘔吐する
・吐血する
・黒い便が出る
・飲み込みにくい
・強い腹痛が続く
・発熱がある
・胸痛や強い息苦しさがある
などの場合には、医療機関へ相談してください。
今回のような高齢者では、
症状の変化を慎重に追うこと
が特に大切です。
よくある質問
Q. 検査で異常がないのに、なぜ胃がこんなにつらいのでしょうか?
内視鏡などで症状を説明できる明らかな異常が見つからなくても、胃腸の運動や知覚、ストレスなどが関係して症状が続く場合があります。
機能性ディスペプシアなどが検討されることもありますので、症状が続く場合は医療機関で相談してください。
Q. コロナ後から始まったなら、コロナ後遺症ですか?
今回の症例では、新型コロナ感染後に症状が始まったという時間的な関係があります。
しかし、それだけで原因を断定することはできません。
長年の精神的負担、年齢、食欲、睡眠、便通など、複数の要因を含めて考える必要があります。
Q. 胃が悪いのに、なぜ腎を見るのですか?
東洋医学では、症状が出ている場所と身体の土台となる弱りが必ず同じとは考えません。
今回の男性では主訴は胃腸症状でしたが、夜間尿、足の冷え、寝汗、のぼせなどがあり、身体を確認すると五臓では腎の弱りがみられました。
そのため胃だけではなく、身体全体から施術方針を考えています。
Q. 胃酸逆流に効くツボはありますか?
胃腸症状に対して古くから使われるツボはあります。
ただ木氣治療室では、
「胃酸逆流だからこのツボ」
とは決めていません。
同じ症状でも、
冷えている方。
熱性の反応がある方。
胃腸そのものが弱っている方。
精神的な緊張が強い方。
など身体は異なるため、その日の状態を確認して施術を組み立てます。
木氣治療室で臨床していて思うこと
今回の症例を診ていて改めて感じたのは、
「検査で異常なし」という言葉で、患者さんのつらさまでなくなるわけではない
ということです。
医学的な検査で重大な病気が確認されていないことは、とても大切です。
一方で、
患者さんは実際に、
食べると苦しい。
胃酸が上がる。
便が出ない。
眠れない。
身体が乾燥する。
不安になる。
という毎日を送っています。
その訴えを、
「検査が正常だから大丈夫」
だけで終わらせたくないと思っています。
一方で、
鍼灸なら何でも説明できるとも考えていません。
必要な検査は病院で受ける。
症状が変われば再受診する。
そのうえで東洋医学では、
検査だけでは捉えにくい身体全体の変化を見る。
この両方が大切です。
今回も最初は、
「胃酸逆流・腹部不快感」
という訴えから始まりました。
しかし、
丁寧に問診をして脈を確認していくと、
長年の精神的負担。
乾燥とむくみ。
のぼせと足の冷え。
浅い睡眠。
夜間尿。
そして、
浮・実・数という脈、労熱・表熱、腎の弱り
という身体像が見えてきました。
「胃の病気を診る」のではなく、
「胃の症状を抱えている、この方の身体を診る」
ということ。
これが今回の臨床で大切にしていることです。
まとめ|「胃」だけではなく、その人の身体を診る
今回ご紹介したのは、
新型コロナ感染後から胃酸逆流、腹部膨満感、吐き気、食欲低下などが続いている79歳男性の症例です。
病院の検査では、症状を説明する明らかな異常は見つかっていません。
しかし身体を詳しく確認すると、
胃腸症状だけではなく、
乾燥。
むくみ。
寝汗。
のぼせ。
足の冷え。
動悸。
息苦しさ。
夜間尿。
不眠。
不安や憂鬱。
など、さまざまな変化がありました。
さらに脈では、
気口・人迎ともに浮・実・数。
症状や生活背景を合わせて、
労熱・表熱
を考えました。
五臓では、
腎の弱り
がみられました。
今回の症例から分かるのは、
胃酸逆流だから胃だけ。
便秘だから腸だけ。
不眠だから自律神経だけ。
という身体の見方では、
患者さん全体を捉えきれないことがあるということです。
感染症。
長年の精神的負担。
加齢。
食欲。
睡眠。
水分の巡り。
寒熱。
そして脈。
それぞれを確認しながら、
「なぜ今、この方にこの症状が出ているのか」
を考える。
木氣治療室では、
症状名だけに施術を当てはめるのではなく、
その日の身体を確認しながら、一人ひとりに合わせた施術を行っています。
今後もこの男性について、
胃酸逆流だけではなく、
食欲。
食事量。
便通。
睡眠。
乾燥。
むくみ。
のぼせ。
足の冷え。
そして脈。
これらがどう変化していくのかを追っていきたいと思います。
※本記事は実際の臨床経験をもとに、個人が特定されないよう一部情報を整理して掲載しています。「労熱」「表熱」「腎の弱り」などは東洋医学における身体の捉え方であり、西洋医学の診断名ではありません。鍼灸は医療機関での診断・治療に代わるものではありません。



















