慢性疲労の原因は鍼灸で解明!根本改善を目指す治療法

「慢性疲労の原因が分からない」「何をしても疲れが取れない」と悩んでいませんか?この記事では、一般的な疲労と異なる慢性疲労の正体から、西洋医学的な視点に加え、東洋医学の鍼灸がどのようにその根本原因を解明し、改善へと導くのかを詳しく解説します。気血水の乱れや五臓六腑の不調、自律神経の乱れが慢性疲労の背景にあることを理解し、鍼灸による具体的な治療法を知ることで、長引く疲労からの解放を目指すヒントが得られます。

1. 慢性疲労とは何か その定義と一般的な疲労との違い

私たちは日常生活の中で、誰もが「疲れた」と感じることがあります。仕事や家事、運動の後など、一時的な疲労は休息を取ることで回復し、翌日には元気に活動できるのが普通です。しかし、慢性疲労は、このような一般的な疲労とは一線を画す状態です。

慢性疲労とは、単なる疲れでは説明できないほどの強い倦怠感が、長期間にわたって継続する状態を指します。具体的には、十分な休息や睡眠を取っても疲労感が改善せず、日常生活や社会生活に支障をきたすほど深刻な状態が続くことを意味します。一般的な疲労が「回復可能な一時的なもの」であるのに対し、慢性疲労は「休息によっても回復しない持続的な状態」という点で大きく異なります。

この疲労は、身体的なだるさだけでなく、思考力の低下や気分の落ち込みなど、精神的・認知的な症状を伴うことも少なくありません。そのため、仕事や学業、趣味など、これまで当たり前にできていたことが困難になり、生活の質が著しく低下してしまうこともあります。

1.1 慢性疲労症候群の診断基準

慢性疲労の中でも、特に重度で特定の基準を満たすものは「慢性疲労症候群」と呼ばれ、国際的に診断基準が設けられています。この症候群は、原因不明の強い疲労感が6ヶ月以上継続し、さらに特定の症状を複数伴う場合に診断されることがあります。

慢性疲労症候群の診断には、専門家による詳細な問診や検査が不可欠です。他の病気が原因ではないことを確認した上で、以下の主要な症状や付随する症状の有無を総合的に判断します。

診断基準の分類 具体的な症状
必須症状
  • 新しく発症した、または明確な発症時期が特定できる原因不明の強い疲労感が6ヶ月以上持続または再発を繰り返すこと。
  • 疲労感が休息によっても改善しないこと。
  • 疲労によって、仕事や学業、社会生活、個人的な活動レベルが著しく低下していること。
付随症状
(以下のうち4つ以上が6ヶ月以上継続)
  • 労作後倦怠感(運動や活動後に症状が悪化し、24時間以上持続する)
  • 睡眠障害(不眠症や過眠症など、睡眠の質が悪い)
  • 記憶力や集中力の低下
  • 喉の痛み
  • リンパ節の圧痛または腫脹
  • 筋肉痛
  • 関節痛(腫れや赤みを伴わない)
  • 頭痛(普段とは異なるパターンや重症度)
  • 体位性頻脈症候群(起立時にめまいや動悸がする)

これらの症状は、患者様によって現れ方や重症度が異なります。ご自身の状態を正確に把握し、適切なケアを受けることが大切です。

1.2 見過ごされがちな慢性疲労のサイン

慢性疲労は、突然重症化するわけではなく、多くの場合、初期の段階で「単なる疲れ」と見過ごされがちなサインを発しています。これらのサインに早期に気づき、対処することが、慢性疲労の進行を防ぐ上で非常に重要です。

以下のような症状が頻繁に現れたり、長期間続いたりする場合は、慢性疲労の兆候かもしれません。

  • 朝起きるのがつらい:十分な睡眠を取ったはずなのに、朝から体が重く、だるさを感じる。
  • 集中力が続かない:仕事や勉強中に、以前よりも集中力が途切れやすくなった、ミスが増えたと感じる。
  • ちょっとしたことでイライラする:些細なことで感情的になりやすくなった、気分の浮き沈みが激しい。
  • 頭痛やめまいが頻繁に起こる:特に原因が思い当たらないのに、頭痛やめまいを感じることが増えた。
  • 微熱が続く:熱があるわけではないのに、体が常にほてっているような微熱感が続く。
  • 肩こりや首こりがひどい:マッサージをしてもすぐに元に戻ってしまう、慢性的な肩や首の痛みに悩まされている。
  • 食欲不振や胃腸の不調:食欲がない、胃もたれしやすい、便秘や下痢を繰り返すなど、消化器系のトラブルが増えた。
  • 風邪をひきやすい、治りにくい:以前よりも免疫力が低下したように感じ、体調を崩しやすくなった。

これらのサインは、疲労が蓄積し、体がSOSを発している証拠かもしれません。忙しい毎日の中で見過ごしてしまいがちですが、ご自身の心身の声に耳を傾け、早めの対処を検討することが大切です。

2. 慢性疲労の一般的な原因 西洋医学的な視点

疲労は誰もが経験する感覚ですが、それが長期間にわたり持続し、日常生活に支障をきたす場合、それは慢性疲労と呼ばれます。西洋医学的な観点からは、慢性疲労には様々な原因が考えられます。ここでは、その中でも特に一般的な原因について詳しく解説いたします。

2.1 ストレスと慢性疲労の深い関係

現代社会において、ストレスは慢性疲労の主要な要因の一つです。精神的なプレッシャーや過度な肉体労働が長期にわたると、私たちの体は常に緊張状態に置かれます。この状態が続くと、自律神経のバランスが乱れやすくなります。自律神経は、心拍、呼吸、消化、体温調節など、生命維持に不可欠な機能を無意識のうちにコントロールしているため、そのバランスが崩れると、睡眠の質の低下、消化不良、免疫力の低下などが起こり、疲労が回復しにくい状態に陥ります。

また、ストレスはコルチゾールなどのホルモン分泌にも影響を与えます。ストレスホルモンが過剰に分泌され続けると、体のエネルギー代謝に異常をきたし、慢性的な疲労感につながることがあります。心身の回復力が追いつかなくなり、疲労が蓄積して慢性化していくのです。

2.2 睡眠不足や生活習慣の乱れが引き起こす疲労

十分な睡眠は、日中の活動で消耗した心身を回復させるために不可欠です。しかし、睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、体は十分に休息できず、疲労物質が蓄積されやすくなります。質の良い睡眠がとれないと、脳や体が十分に修復されず、翌日に強い倦怠感や集中力の低下を感じることが多くなります。

さらに、食生活の偏り、運動不足、過剰な飲酒や喫煙なども、体の代謝機能や免疫機能に悪影響を与え、疲労を蓄積させる要因となります。例えば、栄養バランスの悪い食事は、エネルギー生成に必要な栄養素の不足を招き、だるさや倦怠感を引き起こすことがあります。不規則な生活は、体のリズムを狂わせ、自律神経の乱れをさらに助長し、慢性的な疲労状態を固定化させてしまうことがあります。

2.3 疾患が背景にある慢性疲労

慢性疲労の中には、何らかの疾患が隠れている場合があります。疲労感が長期間続き、他の症状も伴う場合は、その背後に病気が潜んでいる可能性も考慮する必要があります。これらの疾患は、適切な対応が必要となります。

例えば、以下のような疾患が疲労感を引き起こすことがあります。

疾患名 疲労との関連性
甲状腺機能低下症 代謝機能が低下し、全身の倦怠感、だるさ、気力の低下を引き起こします。
貧血 体内の酸素運搬能力が低下し、酸欠状態になることで、疲れやすさや息切れ、めまいなどを感じやすくなります。
糖尿病 血糖値のコントロールがうまくいかず、エネルギー代謝に異常が生じることで、強い疲労感や倦怠感を感じることがあります。
慢性感染症 体内で炎症が持続することで、免疫システムが常に活動状態にあり、体力を消耗し、疲労感が続くことがあります。
自己免疫疾患 免疫システムが自身の体を攻撃することで、全身に炎症が生じ、関節痛や筋肉痛、そして強い疲労感をもたらすことがあります。
睡眠時無呼吸症候群 睡眠中に呼吸が一時的に止まることで、十分な酸素が脳に供給されず、睡眠の質が著しく低下し、日中の強い眠気や疲労感につながります。

疲労感が長引き、日常生活に支障をきたす場合は、専門家にご相談いただくことが大切です。鍼灸は、これらの症状に対して、体のバランスを整え、自然治癒力を高めることでアプローチしていきます。

3. 鍼灸から見た慢性疲労の原因 東洋医学的な解明

慢性疲労は、西洋医学的な検査では異常が見つかりにくいことも多く、その原因が特定しにくい場合があります。しかし、東洋医学の視点から見ると、身体のバランスの乱れが慢性疲労の根本原因として浮かび上がってきます。東洋医学では、身体を単なる臓器の集合体ではなく、気(エネルギー)、血(栄養)、水(体液)といった要素が巡り、五臓六腑が連携して働くひとつの小宇宙と捉えます。このバランスが崩れると、さまざまな不調が生じ、それが慢性疲労として現れると考えるのです。

3.1 気血水の乱れが慢性疲労を引き起こす

東洋医学の基本的な考え方である「気血水(きけつすい)」は、私たちの身体を構成し、生命活動を維持する上で欠かせない三つの要素です。これらがスムーズに巡り、過不足なく存在することで健康が保たれますが、いずれかのバランスが崩れると、慢性疲労をはじめとする様々な不調が生じます。ここでは、それぞれの要素の乱れがどのように慢性疲労につながるのかを詳しく見ていきましょう。

以下に、気血水の乱れとそれに伴う代表的な症状をまとめました。

要素の乱れ 東洋医学的な状態 慢性疲労に関連する主な症状
気の不足(気虚) 全身のだるさや倦怠感、少し動いただけでも疲れる、声に力がなく小さい、食欲不振、風邪を引きやすいなど、エネルギー不足による疲労感が特徴です。
気の滞り(気滞) 精神的なイライラや落ち込み、胸や喉のつかえ感、お腹の張り、ゲップが多いなど、気の巡りが悪くなることで生じるストレス性の疲労感や不調が挙げられます。
血の不足(血虚) 顔色や唇が青白い、めまいや立ちくらみ、不眠、髪や肌の乾燥、爪が割れやすい、生理不順など、身体に栄養が行き渡らないことによる疲労感が特徴です。
血の滞り(瘀血) 肩こりや腰痛などの特定の部位の痛み、手足のしびれ、肌のくすみやクマ、生理痛が強い、冷え性など、血の巡りが滞ることで生じる慢性的な痛みや重だるさが疲労感につながります。
水の滞り(水滞) むくみ(特に朝の顔や手足)、頭重感、めまい、吐き気、関節の痛み、下痢や軟便、鼻水など、体内の余分な水分が滞ることで、身体が重く感じられたり、だるさが増したりします。

3.1.1 気の不足と滞り

東洋医学において「気」は、生命活動の根源となるエネルギーであり、身体のあらゆる機能を動かす原動力です。この気が不足することを「気虚(ききょ)」と呼び、慢性疲労の代表的な原因の一つと考えられています。気虚の状態では、全身の倦怠感、少し動いただけでも疲れる、声に力がなく小さい、食欲不振、風邪を引きやすいといった症状が現れやすくなります。これは、身体を動かすエネルギーが足りないために、常に疲労感に苛まれる状態です。

一方、気が身体の中でスムーズに巡らず、滞ってしまうことを「気滞(きたい)」と呼びます。気滞は、主に精神的なストレスや過度な緊張が原因で起こりやすく、イライラや憂鬱感、胸や喉のつかえ、お腹の張り、ゲップが多いなどの症状を伴います。気の巡りが滞ることで、精神的な疲労感が蓄積し、身体の重だるさや倦怠感にもつながることがあります。

3.1.2 血の不足と滞り

「血」は、西洋医学の血液とは異なり、身体の隅々まで栄養や潤いを運び、精神活動を安定させる役割を持つと考えられています。この血が不足することを「血虚(けっきょ)」と呼び、慢性疲労の重要な原因となります。血虚の状態では、顔色や唇が青白い、めまいや立ちくらみ、不眠、髪や肌の乾燥、爪が割れやすい、女性では生理不順といった症状が現れやすくなります。栄養が十分に供給されないため、身体の回復力が低下し、慢性的な疲労感に陥りやすくなります。

また、血の流れが滞ることを「瘀血(おけつ)」と呼びます。瘀血は、血行不良や冷え、ストレスなどが原因で生じやすく、肩こりや腰痛などの特定の部位の痛み、手足のしびれ、肌のくすみや目の下のクマ、生理痛が強い、冷え性といった症状を伴います。血の滞りによって、疲労物質が体内に蓄積しやすくなり、身体の重だるさや疲労感が慢性化する原因となります。

3.1.3 水の滞り

東洋医学における「水(津液:しんえき)」は、血液以外の体液全般を指し、身体を潤し、老廃物を排出する役割を担っています。この水が体内に過剰に蓄積したり、スムーズに巡らなくなったりすることを「水滞(すいたい)」と呼びます。水滞の状態では、むくみ(特に朝の顔や手足)、頭重感、めまい、吐き気、関節の痛み、下痢や軟便、鼻水といった症状が現れやすくなります。余分な水分が身体に溜まることで、身体が重く感じられたり、だるさが増したりするなど、慢性疲労の一因となることがあります。

3.2 五臓六腑の不調と慢性疲労

東洋医学では、身体の機能を「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」と「六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)」に分類し、それぞれが特定の役割を担い、互いに密接に連携していると考えます。慢性疲労は、これら五臓六腑のいずれかの機能が低下したり、バランスが崩れたりすることによって引き起こされると捉えられます。特に、慢性疲労と関連が深いとされる五臓の機能について解説します。

3.2.1 肝臓の機能と疲労

東洋医学の「肝(かん)」は、西洋医学の肝臓とは異なり、気の流れをスムーズにする働き、血を貯蔵し必要に応じて全身に分配する働き、精神活動を安定させる働きなどを担っています。現代社会のストレスや過労は、この肝の働きに大きな負担をかけます。肝の機能が低下すると、気の巡りが悪くなり「気滞」が生じやすくなります。これにより、イライラや憂鬱感、目の疲れ、筋肉のひきつり、頭痛といった症状が現れ、精神的な疲労感や身体の重だるさにつながります。

3.2.2 脾胃の機能と疲労

「脾(ひ)」と「胃(い)」は、飲食物を消化吸収し、そこから気や血の材料となる栄養を作り出す重要な役割を担っています。東洋医学では、「脾胃は後天の根本」と呼ばれ、生命活動に必要なエネルギー源を生み出す臓器として非常に重視されています。不規則な食生活、過食、冷たいものの摂りすぎ、ストレスなどが原因で脾胃の機能が低下すると、食欲不振、消化不良、お腹の張り、下痢や軟便といった症状が現れます。栄養の吸収が滞ることで、気や血が十分に生成されず、「気虚」や「血虚」の状態に陥り、全身の倦怠感や疲労感、だるさといった慢性疲労の症状を引き起こします。

3.2.3 腎臓の機能と疲労

東洋医学の「腎(じん)」は、生命活動の根源となる「精(せい)」を貯蔵し、成長・発育・生殖、水分の代謝、骨・歯・髪の健康など、広範な生命活動に関わっています。「腎は先天の精を蔵す」と言われ、生まれ持った生命力や抵抗力を司る大切な臓器です。加齢や過労、慢性的なストレス、睡眠不足などが原因で腎の機能が低下すると、「腎虚(じんきょ)」という状態になります。腎虚は、腰のだるさや痛み、耳鳴り、頻尿、精力減退、物忘れ、気力の低下といった症状を伴い、生命エネルギーの消耗による深い疲労感や回復力の低下として慢性疲労に直結します。

3.3 自律神経の乱れと慢性疲労

西洋医学でいう「自律神経」という言葉は東洋医学にはありませんが、その機能は東洋医学の「気血水の巡り」や「五臓六腑のバランス」と密接に関連しています。特に、肝の気の巡りを調整する働きや、心の精神活動を安定させる働きは、自律神経の機能と重なる部分が多いと考えられます。

現代社会では、精神的なストレスや不規則な生活習慣によって自律神経のバランスが乱れやすくなっています。交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなると、身体は常に緊張状態に置かれたり、逆に活動に必要なエネルギーが不足したりします。東洋医学的に見ると、これは気の巡りの滞り(気滞)や、気の消耗(気虚)、さらには肝や心の機能低下として捉えられます。自律神経の乱れは、不眠、動悸、めまい、頭痛、消化器系の不調、精神的な不安定さなど、多岐にわたる症状を引き起こし、これらが複合的に作用することで慢性疲労が深刻化していくのです。鍼灸は、この自律神経のバランスを整えることで、身体本来の回復力を高め、根本的な疲労改善を目指します。

4. 鍼灸が慢性疲労に効果的な理由 根本改善へのアプローチ

慢性疲労は、単なる休息では回復しない厄介な状態です。鍼灸は、この慢性疲労に対して、西洋医学とは異なる東洋医学の視点から根本的な改善を目指すアプローチを提供します。その効果は、身体の巡りを整え、自律神経のバランスを調整し、さらには体質そのものを改善していく点にあります。

鍼灸が慢性疲労に効果的な主な理由は以下の通りです。

鍼灸の主な効果 慢性疲労へのアプローチ
血行促進と疲労物質の排出 身体の隅々まで栄養と酸素を届け、老廃物の滞りを解消します。
自律神経のバランス調整 心身のリラックスを促し、ストレスによる不調を和らげます。
免疫力向上と体質改善 身体本来の回復力を高め、疲労に強い体質へと導きます。

4.1 血行促進と疲労物質の排出

慢性疲労に陥っている方の多くは、身体の血行が悪くなっている傾向が見られます。血行不良は、全身の細胞に必要な酸素や栄養が十分に届かないだけでなく、疲労物質や老廃物が体内に滞りやすくなる原因となります。

鍼灸施術では、身体の特定のツボに鍼を刺入することで、その周囲の血管を拡張させ、血流を促進する作用が期待できます。また、筋肉の緊張が和らぐことで、圧迫されていた血管が解放され、よりスムーズな血の巡りが促されます。これにより、滞っていた疲労物質や老廃物が効率的に排出され、新鮮な酸素や栄養が細胞の隅々まで行き渡るようになります。

東洋医学では、血の巡りは「血(けつ)」として捉えられ、その滞りは「瘀血(おけつ)」と呼ばれます。鍼灸は、この瘀血を改善し、身体全体の巡りを活性化させることで、慢性的なだるさや重さといった疲労感を軽減へと導きます。

4.2 自律神経のバランス調整

慢性疲労は、ストレスや不規則な生活習慣などによって自律神経のバランスが乱れることが大きな原因の一つです。自律神経は、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経の二つから成り立ち、これらがバランス良く機能することで、心身の健康が保たれます。

慢性的な疲労状態では、交感神経が優位になりがちで、常に緊張状態が続くことで、心身ともに休まる時間が少なくなってしまいます。鍼灸は、ツボへの刺激を通じて、副交感神経の働きを活性化させ、過剰に興奮した交感神経の働きを鎮める効果が期待できます。これにより、心拍数や血圧が安定し、筋肉の緊張が緩み、深いリラックス状態へと導かれます。

自律神経のバランスが整うことで、睡眠の質が向上したり、消化吸収能力が高まったりと、身体の様々な機能が正常に働き始めます。結果として、心身の回復力が高まり、慢性的な疲労感の軽減に繋がっていくのです。

4.3 免疫力向上と体質改善

慢性疲労に悩む方は、免疫力が低下しているケースも少なくありません。免疫力が低下すると、風邪を引きやすくなったり、アレルギー症状が悪化したりと、体調を崩しやすくなります。これは、身体が常に疲弊しているため、外部からの刺激に対する抵抗力が弱まっている状態と言えます。

鍼灸は、身体が本来持っている自然治癒力を高めることを目的とした治療法です。ツボへの刺激は、神経系や内分泌系、免疫系にも影響を与え、これらの機能が相互に連携して働くことで、免疫細胞の活性化が促されると考えられています。免疫力が向上することで、身体は外部からの病原体やストレスに対してより強くなり、疲労からの回復も早まります。

さらに、鍼灸は、個々の体質や症状に合わせて施術を行うことで、根本的な体質改善を目指します。東洋医学では、慢性疲労の原因を「気」「血」「水」のバランスの乱れや「五臓六腑」の機能低下と捉えます。鍼灸によってこれらのバランスを整え、特定の臓器の機能を高めることで、疲労を感じにくい、疲れにくい体質へと変化していくことが期待できるのです。これは、一時的な症状の緩和だけでなく、長期的な健康維持にも繋がる、鍼灸ならではの大きなメリットと言えます。

5. 鍼灸による慢性疲労の具体的な治療法

慢性疲労の改善を目指す鍼灸治療は、単に症状を抑えるだけでなく、根本的な原因にアプローチすることを重視します。東洋医学の知見に基づき、お一人おひとりの体質や症状、生活習慣を丁寧に把握し、最適な治療計画を立てていきます。

5.1 問診と体質判断 慢性疲労の原因を探る

鍼灸治療の第一歩は、丁寧な問診と東洋医学的な体質判断です。慢性疲労は多岐にわたる症状を呈し、その原因も複雑に絡み合っています。そのため、西洋医学的な検査では見つけにくい「未病」の状態や、体全体のバランスの乱れを詳細に探ることが重要になります。

問診では、現在の症状だけでなく、いつから疲労を感じているのか、どのような時に悪化するのか、食事や睡眠の質、ストレスの有無、既往歴など、詳細な情報をお伺いします。さらに、東洋医学独自の診断法である舌診(舌の色や形、苔の状態を見る)、脈診(脈の速さや強さ、深さなどを診る)などを用いて、体内の「気・血・水」の巡りや「五臓六腑」の働き、自律神経の状態などを総合的に判断します。

これらの情報から、例えば「気が不足している気虚の状態か」「血の巡りが滞っている瘀血があるか」「水分代謝が悪い湿痰があるか」といった、お一人おひとりの慢性疲労の根本原因を特定し、その方に合わせた治療方針を導き出します

5.2 ツボの選定と鍼灸施術の流れ

問診と体質判断の結果に基づき、お一人おひとりの状態に最適なツボを選定します。ツボは全身に点在しており、それぞれが特定の臓腑や経絡、症状と深く関連しています。鍼灸治療では、選定されたツボに鍼を優しく刺入したり、お灸で温めたりすることで、体の内側から働きかけます

一般的な鍼灸施術の流れは以下のようになります。

まず、患者様にはリラックスできる体勢で横になっていただきます。鍼を刺入する際は、髪の毛ほどの細い鍼を使用するため、ほとんど痛みを感じることはありません。ツボに鍼が届くと「ズーン」とした独特の響きを感じることがありますが、これは「得気(とっき)」と呼ばれるもので、ツボに刺激が伝わっている証拠です。この響きは、その方の体質や感受性によって感じ方が異なります。

鍼を刺入した後は、しばらくそのまま置鍼(ちしん)する時間があります。この間に体内で気血の巡りが促進され、自律神経のバランスが整えられていきます。必要に応じて、温かいお灸を併用することもあります。お灸は、ツボを温めることで血行をさらに促進し、冷えの改善や免疫力の向上にも効果が期待できます。

施術時間は、症状や治療内容によって異なりますが、通常は30分から60分程度です。施術後には、体が温まったり、リラックスして眠気を感じたりする方もいらっしゃいます。

5.3 慢性疲労の症状別アプローチ

慢性疲労の症状は多岐にわたりますが、鍼灸ではそれぞれの症状に対し、その背景にある東洋医学的な原因を見極め、適切なアプローチを行います。

5.3.1 倦怠感やだるさへの鍼灸

慢性疲労における最も代表的な症状が、倦怠感や全身のだるさです。東洋医学では、これは「気」の不足(気虚)や「気」の滞り(気滞)、「湿」の停滞などが主な原因と考えられます。気が不足すると、体を動かすエネルギーが足りなくなり、だるさや疲れやすさを感じます。また、気の巡りが滞ると、全身に栄養や酸素が十分に運ばれず、重だるさや倦怠感につながります。

鍼灸では、気の生成を助け、全身の巡りを促進するツボを選定します。例えば、脾胃の働きを高めてエネルギー源となる「気」を作り出す力を高めるツボや、全身の気の流れをスムーズにするツボにアプローチします。これにより、体の内側から活力が湧き、だるさや倦怠感が軽減されることを目指します。

5.3.2 不眠や精神的な疲労への鍼灸

慢性疲労は、不眠やイライラ、不安感、集中力の低下といった精神的な疲労を伴うことが少なくありません。東洋医学では、これらの症状は「心」や「肝」の機能の乱れ、あるいは自律神経のバランスの崩れと深く関連していると考えます。例えば、肝の気が滞るとイライラしやすくなり、心の血が不足すると不眠や動悸につながることがあります。

鍼灸では、自律神経のバランスを整え、精神を安定させる効果のあるツボに重点的にアプローチします。頭部や手足にある鎮静作用を持つツボ、または肝や心の経絡上のツボに刺激を与えることで、過剰な興奮を鎮め、リラックスを促します。これにより、寝つきが良くなったり、睡眠の質が向上したり、精神的な安定感が得られることを目指します。

5.3.3 消化器系の不調を伴う慢性疲労への鍼灸

慢性疲労の方の中には、食欲不振、胃もたれ、便秘、下痢などの消化器系の不調を訴える方も多くいらっしゃいます。東洋医学では、消化吸収を司る「脾胃(ひい)」の機能が低下すると、食べたものから十分に「気」や「血」を作り出せず、結果として全身のエネルギー不足、つまり慢性疲労につながると考えます。

鍼灸では、脾胃の機能を高め、消化吸収能力を改善するツボにアプローチします。お腹周りや足にある消化器系のツボに鍼やお灸を用いることで、内臓の働きを活性化させ、血行を促進します。これにより、食欲が回復したり、胃腸の不調が改善されたりすることで、体に必要な栄養がしっかりと吸収され、慢性疲労の根本的な改善につながることが期待できます。

6. まとめ

慢性疲労の原因は、西洋医学的なストレスや生活習慣だけでなく、東洋医学でいう気血水の乱れ、五臓六腑の不調、自律神経の乱れなど、多岐にわたります。鍼灸は、これらの見過ごされがちな根本原因を東洋医学の視点から深く解明し、一人ひとりの体質に合わせたアプローチで、血行促進、自律神経のバランス調整、免疫力向上を促します。これにより、単なる症状緩和にとどまらず、体質そのものを改善し、慢性疲労の根本的な解決を目指せるのです。もし慢性疲労でお困りでしたら、ぜひ当院へお問い合わせください。

この記事を書いた人

こんにちは。木氣治療室院長の石塚雅章です。痛みがない、病気になっていないから私は健康です、とは言えません。日常の動作や姿勢、生活習慣を見直し、予防しましょう。そして、体の不調がなく、趣味を長く続け幸せな生活を送っていただけるよう、サポートをしていきますのでよろしくお願いします。

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