妊娠と体の変化を東洋医学から考える

― 命を育てる時間を、どう過ごすか ―

妊娠すると「体の感じ」が変わる

妊娠が分かってから、
「今までと同じように体が動かない」
「理由は分からないけれど、不安になる」
そう感じる方は少なくありません。

つわり、眠気、だるさ、気分の揺れ。
検査では問題がなくても、
自分の体の変化についていけない感覚が出てくることもあります。

妊娠は病気ではありません。
ただ、体にとっては
これまでとは役割が大きく変わる時期でもあります。

東洋医学では、
妊娠を「命を迎えるために、体の重心が移り変わる過程」
として捉えてきました。


西洋医学的に見た妊娠中の体

西洋医学では、妊娠中の体の変化は、

・ホルモンバランスの大きな変化
・血液量の増加
・自律神経の切り替え

などによって説明されます。

これらはすべて、
赤ちゃんを育てるために必要な変化です。

一方で、その変化のスピードに
体や心が追いつかないと、

・強い眠気
・胃の不快感
・立ちくらみ
・気分の不安定さ

といった形で表に出ることがあります。


東洋医学では妊娠をどう捉えるか

東洋医学では、
妊娠は「新しい命を守るために、体が内向きに切り替わる時期」
と考えます。

これまで自分のために巡っていた
気や血は、
少しずつお腹の中へと向かいます。

古典には、
「女子、以血為本」
という言葉があります。

女性の体は血の働きと深く関わり、
妊娠中は特にその影響を受けやすいとされてきました。


気・血・津液から見る妊娠中の変化

気の変化

妊娠中は、
気が下へ集まりやすくなります。

そのため、

・頭がぼーっとする
・息切れしやすい
・やる気が出にくい

と感じることがあります。

これは気が不足しているというより、
使われる場所が変わった結果と考えると分かりやすいかもしれません。


血の変化

血は、体と心の両方を養います。

妊娠中は、
血が赤ちゃんを育てるために優先的に使われるため、

・めまい
・立ちくらみ
・疲れやすさ

が出ることがあります。

気分の揺れや不安感も、
血の使われ方の変化と無関係ではありません。


津液の変化

津液は、
体を潤し、熱を調整する働きを持ちます。

妊娠中は水分の配分が変わるため、

・むくみ
・体の重だるさ
・胃のむかつき

といった感覚につながることがあります。


五臓六腑と妊娠の関係

腎と妊娠

東洋医学では、
腎は「生命の土台」を担う臓と考えます。

妊娠は、
この腎の力を使って新しい命を育てる状態です。

疲れやすくなったり、
休みたくなるのは、
体が自然と守りに入っているサインとも言えます。


脾とつわり・消化の不調

脾は、
食べ物からエネルギーを作り、
体を支える臓です。

妊娠中に脾の働きが追いつかなくなると、

・食欲の変動
・胃の不快感
・つわりのような症状

が出やすくなります。

無理に食べようとせず、
食べられるものを少しずつ取ることも、
体を助ける選択になります。


肝と気分の揺れ

肝は、
気や血の巡り、
情緒の安定と関係します。

妊娠中は、
体の変化や環境の影響で
肝の働きが乱れやすくなります。

理由のない不安や、
感情の揺れが出るのも、
珍しいことではありません。


肺と後半期の変化

妊娠後半になると、
肺の働きが関わってきます。

肺は、
気を全身に巡らせ、
呼吸や皮膚とも関係する臓です。

この時期に、

・息苦しさ
・疲れやすさ
・むくみ

を感じる方もいます。

体の使い方が変わることも、
肺の働きに影響すると考えられます。


心と妊娠中の情緒

東洋医学でいう「心」は、
感情だけでなく、
意識・思考・眠りと深く関係します。

妊娠中に、

・理由のない不安
・眠りにくさ
・考えがまとまりにくい

と感じるのは、
心が弱っているのではなく、
血の使われ方が変わっている影響とも考えられます。

心と腎は支え合う関係にあり、
出産が近づくにつれて
心が揺れやすくなることもあります。


妊娠期間と脈状の変化

東洋医学では、
体の状態を知る手がかりとして
脈を大切にしてきました。

妊娠中の脈は、
病的というより
「役割が変わっている途中の脈」
として現れることが多いのが特徴です。


妊娠初期の脈

・柔らかく
・やや深く
・腎や脾に関係する反応が目立つ

体が内側を優先している段階と考えられます。


妊娠中期の脈

・張りが出てくる
・リズムが安定してくる
・肝や脾の働きが前に出る

体が妊娠状態に順応してくる時期です。


妊娠後期の脈

・重さを感じる
・下半身側の反応が強くなる
・腎の反応が目立つ

出産に向けた準備段階と考えられます。


妊娠中は「2ヶ月ごと」に五臓の重心が移る

東洋医学では、
妊娠中の体を
おおよそ2ヶ月ごとに、五臓の役割が移り変わる流れ
として捉える考え方があります。

・〜2ヶ月頃:腎
・2〜4ヶ月頃:肝
・4〜6ヶ月頃:脾
・6〜8ヶ月頃:肺
・8〜10ヶ月頃:腎へ回帰

これは決めつけではなく、
体の変化を理解するための目安です。

不調が出たときも、
「今は切り替わりの途中かもしれない」
と捉えることで、
少し安心できることもあります。


心の揺れは「異常」ではない

妊娠中の不安や揺れを、
性格の問題だと感じてしまう方もいます。

東洋医学では、
それを性格ではなく、
体の変化が心に反映している状態
と考えます。

妊娠中の体は、
守りながら変化している途中です。


最後に

東洋医学では、
妊娠中の体を
「整えながら、守る時間」
と考えます。

不調や不安があるとき、
それは弱さではなく、
体が一生懸命働いているサインかもしれません。

妊娠中の体は、
五臓が順番にバトンを渡しながら
命を育てている途中とも言えます。

今感じている変化も、
その流れの一部として、
静かに受け取ってみてください。

体は、
ちゃんと準備を進めています。

この記事を書いた人

こんにちは。木氣治療室院長の石塚雅章です。痛みがない、病気になっていないから私は健康です、とは言えません。日常の動作や姿勢、生活習慣を見直し、予防しましょう。そして、体の不調がなく、趣味を長く続け幸せな生活を送っていただけるよう、サポートをしていきますのでよろしくお願いします。

あん摩マッサージ指圧師

はり師

きゅう師

柔道整復師